2004年3月
中村仁前町長
山形県最上町ウェルネスプラザ「最上ヘルス温泉」は、1992年に建設が始まった。完成までの道のりは一筋縄ではいかなかった。「今思い出してもぞっとする」と話すのは、前町長の中村仁さん(当時80歳)。建設地は、町内でも温泉が出にくいとされていた地域。それでも、「町の福祉の中心地を作るのに、高齢者が喜ぶ温泉は欠かせない」と、町は、一か八かの温泉掘削を決めた。当初の掘削予定は最深で1000メートル。
ところが、半年かけても温泉は出なかった。掘削だけで約1億円を投入した一大事業で、失敗は許されない。中村さんは「辞職も覚悟した」が、掘削業者から、さらに20メートルだけサービスで掘ってもらえることに。すると、1メートル掘り進めた地点で待望の温泉が……。
病院内のすべての個室で温泉に入浴できる
今では、公衆浴場「最上ヘルス温泉」の利用者数は年間約2万人。病院内のすべての個室で温泉に入浴でき、温泉熱を利用したプールやビニールハウスも一般に開放されているほか、デイサービスセンターの訪問介護では、職員が湯をタンクに入れて利用者のもとに運ぶサービスも。
この温泉は、神経痛や冷え症、疲労回復などに効果があるとされる。外来や見舞いで病院に来た帰りに立ち寄る人も多く、浴場に隣接する大広間は、いつも町民でいっぱい。
山形県最上郡最上町向町43の1。